音楽コラム エリック・サティのピアノとレコード~海辺のサティ~

音楽コラム エリック・サティのピアノとレコード~海辺のサティ~

久しぶりにレコードを聴いている。エリックサティのピアノだ。

我が家にテレビ視聴のためのモニターが来てからというもの、スピーカーの外部接続の赤と白のプラグはテレビのためのものになった。
テレビはテレビで、楽しい深夜番組やバラエティー、映画を撮り貯めながら楽しんでいるものの、東京くらしでいつも共にあったラジオとレコードは、静岡くらしの中で、確実に隅に追いやられてしまった。

私がレコードを聴くきっかけになったのは、高校の友達の家に遊びに行ったときのことだった。山奥の、ともすれば別荘地用の、言うなれば自然は豊かだが、生活するには少し不便なような土地に住む、その友達の家に蛍を見に、高校の仲良しグループで泊まりに行ったときだった。
お母さんが言うには、モモンガやカモシカも道で出くわすことがあるらしい。皆で蛍を見て、わいわいお喋りしながら夜を明かし、目が覚めたとき。

それは幸せの一つの形のような、そんな朝だった。

パン焼き機から焼きたてのパンの匂い、音質のよいスピーカーから鳴り響くジャズ。木材がふんだんに使われたリビングに寝ぼけまなこで降り立った10代の私は、緑の新鮮な空気とパンとコーヒーの香りだけが充満した部屋の中で、こういう世界があるのか、と単純に感動した。

そして、私は、古道具屋に詳しい美術の先生に相談して、中古の機器を取り扱う店でポータブルレコードプレイヤーを購入した。CDコンポに繋げれば聞けるものだ。あの山奥で見た夢の暮らしに一歩近づいた気がした。

そして、15年経った今もそのプレイヤーを使い続けている。
自然豊かな暮らしも、パン焼き機も、我が家には特にない。あの家にあった、お父さんのこだわりの逸品であろう金属質の四角いフォルムに宝石のように並べられた丸いつまみのプレイヤーもアンプも、ボーズのスピーカーも特にない。高校生の頃から、このポータブルプレイヤーと何十枚かの中古のレコードで、満足している。

色紙より大きい見ごたえのあるレコードジャケット、指紋がつかないように紙のケースから取り出す瞬間、壊れ物を扱うようにレコードを台に載せて、スイッチを押す。それだけで、満足している。

 

『海辺のサティ』というレコード

今日はエリックサティのジムノペティから始まる『海辺のサティ』というレコード。
「ジムノぺティ」から始まるこのレコードは、「冷たい小曲 逃げ出したくなる3つの曲」を経て、「夏の終わり」にで終わる。フェビアン・レザ・バネというピアニストの音は、本当に軽やかで海辺のさざ波と潮のにおいを含んだ風を思い起こさせる。

1986年に販売された、私とそう年の違わないレコードから奏でられる音楽と、コーヒーと、五月の新緑の風を楽しんでいる。

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